突如訪れた「MSN」解体の日。メッシを生かす新システム誕生の可能性への期待。(森田泰史)




ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍は、世界中に驚きを与えた。2億2200万ユーロ(約286億円)という破格の獲得費もさることながら、バルセロナを離れるという決断も、である。

ネイマールの退団で、バルセロナは「MSN」の解体を余儀なくされた。リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマール。南米出身選手たちの頭文字を取った愛称で親しまれた3トップはバルセロニスタに幾度となく歓喜を届け、彼らを熱狂の渦に巻き込んだ。

スアレスがリヴァプールから加入した2014年夏(FIFAの処分があったため正確には同年10月)以降、MSNは驚異的な数字を残してきた。ピッチ外の仲の良さでも知られた3選手は、3年間で公式戦363得点を記録している。

2014-15シーズン、15-16シーズン、16-17シーズン、MSNは毎シーズン100得点以上を挙げてきた。レアル・マドリーの「BBC」ですら、これほどの得点力は保証できていない。

■ネイマールの退団で新たなフェーズに

しかし、ネイマールは移籍を決断した。バルサはブラジル代表FWの後釜として、フィリペ・コウチーニョ(リヴァプール)、オスマン・デンベレ(ドルトムント)らの獲得に動いているが、現時点でネイマールが残した穴は開いたままだ。

ネイマール不在のチーム。今季からエルネスト・バルベルデ監督に指揮を託したバルサは、新たなフェーズに突入する。

ジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)は、メッシを3トップの中央に置くことで彼のポテンシャルを十二分に引き出した。小柄なメッシをCFに配置する「逆転の発想」に、対戦チームは対策を講じられず、神出鬼没な背番号10に手を焼いた。

「ファルソ・ヌエベ」「ゼロトップ」と称されたシステムで、メッシは得点センスを開花させる。2011-12シーズンには、キャリアハイとなる公式戦73得点(リーガ50得点)を記録。技巧に優れた選手に留まらず、結果に直結するプレーを覚えたのである。

メッシがバルサで絶対的な選手となったのは、グアルディオラの功罪かもしれない。サミュエル・エトー、ズラタン・イブラヒモビッチ、アレクシス・サンチェス、そしてネイマール。名立たるクラック(名手)たちがメッシの脇で苦しみ、カタルーニャの地を離れて行った。

ペップが率いたバルサで、メッシを輝かせるのに必要だったのはスター選手ではなく、ペドロ・ロドリゲスやボージャン・クルキッチら献身的なカンテラーノだったのである。

■メッシのポジションとスタイルの再構築

ヘラルド・マルティーノ監督やティト・ビラノバ監督がペップの仕掛けた「爆弾」の制御に試行錯誤したのち、2014年夏に就任したルイス・エンリケ監督はその呪縛から逃れるため、メッシのポジションを変更した。

「サイドバックだったとしても、世界一の選手」とメッシを称賛したことがあるL・エンリケは、彼の試合解釈能力を誰よりも買っていた。ふらふらと散歩するようにピッチを浮遊するメッシが、ギアをいきなりトップに上げた時、それを止められる選手はいない。何より、メッシ自身が「いつ」それを発揮すべきかを深く理解している。

だからメッシはピッチ上の何処にいてもメッシであり続ける。そう考えたL・エンリケは、メッシを右ウィングに配置した。これがMSNの爆発のきっかけとなった。3季連続3桁得点など、“ペップ・チーム”でも実現できなかった偉業だ。

一方で、MSNに依存してきたバルサが失ったものがある。それはポゼッションであり、ポジションプレーだ。バルサの育成組織では、カンテラーノたちが6パターン程度のフォーメーションを身体に叩き込めるように腐心すると聞いたことがある。だからこそ彼らは、フィジカル差のあるトップチームに昇格しても、それなりにプレーできてしまうのだ。

だがMSNが席巻したチームで、そのエッセンスは失われた。“N”の離脱で、バルベルデ監督は皮肉にも原点に戻る必要性に駆られている。それはバルサのスタイルを取り戻すことであり、メッシを極限まで生かすことだ。新指揮官の手腕と、チームの方向性が問われている。




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