”義”と”利”が激突する天下分け目の決戦『関ケ原』は映画ならではの迫力を感じられる大作(紀平照幸)



 これは以前にも書いたことがあるのですが、「結末がわかっている物語をどう面白く描くか」が作り手の力量が試されるものだと思うのです。戦国時代最大の戦闘、天下分け目の合戦“関ヶ原の戦い”を原田眞人監督が映画化(なんと構想25年!)。もちろんSFや架空戦記ではないので史実とは違う終わり方にはなり得ません。それでも2時間29分の長尺にわたって、緊張感は持続します。

 原作は司馬遼太郎の同名小説。“官僚的”“小才子”“文官”と評されることの多かった石田三成を“義に生きた武将”として描いたのが大きな特徴。この映画では岡田准一が演じることで武人としての側面がさらに強調され、自ら前線にも押し出す勇壮な存在として主役感を放っています。対する役所広司演じる徳川家康は策謀家の狸親父として描かれ、“義”と“利”の激突という点がテーマとなっているのです。

 タイトルは『関ケ原』ですが、そこに至るまでの経緯を映画は丁寧に描きます。寺の小坊主だった三成が豊臣秀吉(滝藤賢一)に見出されるくだりから、朝鮮出兵、秀吉の死、その後の豊臣政権の混乱など、関ヶ原への道をじっくりと追っていくのです。秀吉の遺志を守らんとし、義と正論で世を動かそうとする三成の苦悩は、そういうものだけでは世の中は回らないということを理解している我々には胸が痛い描写の連続です。

 やがて東西激突の時がやってきます。この合戦シーンは日本映画界屈指の迫力。人間も馬も火薬もこれでもかと動員され、合戦が結局は人と人の殺し合いにすぎないという残酷さも描き出していきます。血と爆炎の饗宴です。この物語はかつてTVスペシャルとしてオールスターキャストでドラマ化されたこともあるのですが、配役の豪華さではそれに一歩を譲るものの、戦場の迫力でははるかにこちらが勝っています。現在とは違う昔の戦いですから情報がリアルタイムで伝わることはなく、そのもどかしさが伝わってくるのも優れている点。ゲームのように全体を俯瞰することなどできるわけはないのですから…。

 三成の頼れる師でもある猛将・島左近には平岳大。彼も風格を感じさせるようになりました。ワンシーンだけ登場の直江兼続(松山ケンイチ)もいい感じ。個人的には大谷刑部を演じた大場泰正に注目したいところです。

 ところで、映画では原作から改変された部分もかなりあります。三成の愛妾として描かれた初芽(有村架純)は伊賀忍者という設定に変更され、三成との関係もほのかな恋心程度に抑えられています(忍者の世界がかなりフィーチャーされているのも今回の映画版の特徴です)。戦いの趨勢を決定した小早川秀秋(東出昌大)にしても従来のような“優柔不断の裏切り者”ではなく、新たな視点で描かれているのです。原作ではかなり出番が多かった黒田如水はこの映画には登場せず。まあ、これは岡田准一のドラマ「軍師官兵衛」のイメージが強すぎるので、別の役者の如水を出すと混乱してしまうかも…という考えもあったのかもしれませんが。

(付記)

西軍の中でも強烈な存在感を放っているのは薩摩の島津軍。でも、よく考えたら彼らの薩摩弁と秀吉周辺の尾張弁以外、訛っているひとがいなかった…。

(『関ケ原』は8月26日から公開)

(c)2017「関ヶ原」製作委員会


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