バルベルデがペップ、ルチョを超えるために。新たな戦術「偽ウィング」の機能性と築いた常勝の道。(森田泰史)




数多のタイトルを獲得してきた名称たちに肩を並べるのは、容易なことではない。

今季のバルセロナはリーガエスパニョーラ開幕から6連勝。破竹の勢いで宿敵レアル・マドリーとの勝ち点差を7ポイントまで広げ、就任1年目のエルネスト・バルベルデ監督は早くも常勝への道筋を築いている。

■ペップ、ルチョを超えるには

空前絶後の6冠を達成したジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)、3冠を果たしてバルセロニスタの希望を取り戻したルイス・エンリケ監督に追い付き、追い越す。この難解な命題を請け負ったバルベルデはスペイン・スーパーカップでマドリーに蹂躙されたショックにも堪え、信頼性の高いチームを構築してきた。

リーガ開幕からの6連勝。これはグアルディオラ監督に並ぶ記録で、L・エンリケ監督が達成できなかった数字だ。

ペップ(グアルディオラ監督の愛称)は09-10シーズンに6連勝を飾っている。第7節、敵地メスタージャでバレンシアに0-0と引き分け、連勝がストップ。だがペップ・チームはそのシーズン、第22節アトレティコ・マドリーに敗れるまで無敗を続け、このアトレティコ戦を除いては一度も敗戦することなくリーガ制覇を達成した。

一方でルチョ(ルイス・エンリケ監督の愛称)は14-15シーズンに4連勝、15-16シーズンに4連勝、16-17シーズンに2連勝と、5連勝以上を成し遂げたことはなかった。

■「偽ウィング」という新たな戦術

ペップはリオネル・メッシを3トップの中央に配置するファルソ・ヌエベを発明した。「偽背番号9」「ゼロトップ」とも呼ばれた戦術で、バルセロナは破壊的な攻撃力を見せ付け、メッシは11-12にキャリアハイとなるリーガ50得点を記録。バルセロナは4シーズンで14個のタイトルを手中に収めた。

ルチョはメッシを右サイド、中央にルイス・スアレス、左サイドにネイマールを据えて「MSN」を形成。この3トップは2014-15シーズンから合計364得点を記録し、3冠をもたらすなど、バルセロニスタは再び成功の甘美に酔いしれた。

だがバルベルデの指揮官就任から間もなく「MSN」は解体を余儀なくされる。移籍騒動の末にネイマールがパリ・サンジェルマンに新天地を求めたのだ。

ポゼッションを御家芸とするバルセロナにとって、悩みの種はサイドで深みを取れるかどうかである。特にネイマールが抜けた今季、1対1で縦に突破できる選手の不在が浮き彫りになるのは明らかだった。

そこで、バルベルデは戦術として「偽ウィング」を機能させる。その担い手は左SBのジョルディ・アルバだ。右WGにはウスマン・デンベレ、ジェラール・デウロフェウ、アレイシス・ビダルといった純粋なウィング型の選手が置かれる。アタッキングサードでは瞬間的に実質4トップを形成することで、攻撃深度を高める。

横幅と深度を確保した上で、チングリ(バルベルデの愛称。バスク語で「蟻」を意味する)のチームは更なる揺さぶりを掛ける。2列目の飛び出しだ。アンドレス・イニエスタ、イヴァン・ラキティッチらが積極的に相手守備陣の裏を狙う。パウリーニョが重宝されているのは、得点力もさることながら、その特性が指揮官の求めるフットボールに適合しているという理由がある。

もちろん守備も怠ることはない。チングリの提示する方法論は前線からのプレッシングだ。攻撃から守備への切り替えスピードはリーガの中でも群を抜いている。

■評価対象はタイトル獲得数

過去、バルセロナでルチョがペップに並ぼうとしていたところで、その行く手を阻んだのが、他ならぬバルベルデである。15-16シーズンのスペイン・スーパーカップ、バルセロナはアスレティック・ビルバオに2試合合計スコア1-5でまさかの敗戦。その時にアスレティックを率いていたのがバルベルデだ。

バルセロナにとっては、2009年以来、7年ぶりとなる6冠の夢が跡形なく崩れ去った瞬間だった。その男が、今度はバルセロナを指揮して歴史に名を刻もうとしている。

この夏、バルセロナはネイマールの移籍で補強に追われ、バルベルデは大事な準備期間を喧騒の中で過ごした。だからこそ、序盤戦における彼の功績は大きい。

だがシーズンは始まったばかり。今季終了時に獲得したタイトル数で自身が評価されるという現実を、知的なる指揮官は理解しているはずだ。




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