過労死した元NHK佐戸未和記者が学生時代に報じた「沖縄米軍ヘリ墜落事故」動画リポートを有志が公開(堀潤)



■NHKと遺族で食い違う見解 なぜ彼女の死は公表されなかったのか

2013年7月24日、うっ血性心不全を起こして亡くなったNHK記者の佐戸未和さん。当時31歳でした。過重労働が原因で死亡したとして2014年に労災認定を受けました。しかし、彼女の死が3年の間公表されることはありませんでした。亡くなる直前1カ月の残業時間は約159時間にのぼったと言います。

なぜ、彼女の死は公表されなかったのか。NHK側は「遺族の意向だった」と説明していましたが、昨日(13日)、未和さんのご両親が厚生労働省内で記者会見し「事実ではない」と反論しました。朝日新聞の報道によると、会見の中で佐戸さんの父は「未和は記者として、自分の過労死の事実をNHKの中でしっかり伝え、再発防止に役立ててほしいと天国で望んでいると信じる」と語ったと言います。NHKの対応は適切だったのでしょうか。

■学生時代に佐戸未和さんは「沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故」を取材 当時の映像公開へ

未和さんは一橋大学に通っていた学生時代に、学生ラジオ局「BSアカデミア」のニュース班に所属していました。TBSキャスターとして活躍してきた下村健一さんなどが指導にあたったといいます。当時は大学4年生。下村さんはこう振り返っています。

毎回僕のダメ出しを受けては悔しがり、うまくいくと満面の笑みを浮かべていた佐戸“みわっち”。念願叶ってNHK記者になってからも、取材相手からの信頼はとても厚かった。

出典:下村健一さんtwitterより

下村さんは今年7月、メディアリテラシーを伝えるため絵本を出版しました。挿絵には現場から子ども達にニュースを伝える女性が描かれています。笑顔でマイクを握るこの女性こそ佐戸未和さんです。「みわっちの報道に対する真摯な姿勢を次の世代に伝えたい」下村さんの絵本には若くして命を落とした彼女への強い思いが込められています。

下村健一さんの絵本「『窓をひろげて考えよう 体験!メディアリテラシー』
下村健一さんの絵本「『窓をひろげて考えよう 体験!メディアリテラシー』

そうした中、今週、沖縄県東村高江集落で米軍の大型輸送ヘリコプターCH53が炎上する事故が発生しました。

実は未和さんは2004年8月に沖縄県の沖縄国際大学に墜落した米軍ヘリの事故について現場で取材しリポートを製作しています。

「彼女が生きていたら、今回の事故をどのような目線で取材し発信していたのだろうか。きっと伝えたいことがたくさんあったに違いない。」下村さんはかつて指導した元学生達と共に当時のリポートを再び社会に発信することを決めました。BSアカデミアが解散されてからはお蔵入りになっていた貴重な映像です。

下村さんが私が仲間と運営するニュースメディア「GARDEN」に当時の動画とそれに合わせた記事を寄稿してくれました。

こちらに転載します。ぜひご覧になって見て下さい。

未和さんが丁寧な取材で沖縄の米軍基地の問題を多角的な目線で発信しています。彼女の想いを再び今に。多くの人々に届くことを願っています。



一昨日(10月11日)、沖縄県東村の高江で米軍の大型ヘリコプターCH53が炎上、大破した。またも、繰り返された事故。2004年8月にあの普天間飛行場近くの沖縄国際大学に墜落した米軍ヘリも、(型番は違えど)CH53だった。

実はあの沖国大の事故のとき、「大学のキャンパス内に墜落したのに、当の大学生たちの動きが現地から報道されてこない。これは自分たちの目で確かめに行くしかない!」と、東京から自腹を切って現地に出かけた学生メディアがあった。その中心的存在が、一橋大学4年生(当時)の“みわっち”----先週、4年前の過労死がようやく公表されたNHK記者の、佐戸未和さんだった。

この7分半のリポートの間じゅう、ナレーションやインタビューの声でずっと登場している佐戸さん。同じ学生同士という《近さ》から、彼女の問いかけに応える沖縄の学生たちも、実に率直に思いを語る。

墜落を目撃した学生は、「ヘリコプターや飛行機が飛んでいると言う、自分の中で《自然》だった光景が、実は《不自然》なものなんだと気がつい」て、学内の仲間たちに事件についてもっと知ってもらうために、プラカードやビラを作り始めた。事故現場をそのまま保存することを求めて、署名活動を始めたゼミもある。

しかしその一方で、「(基地反対運動は)雲の上の話。遠くに感じちゃう」と言う学生。夜間は「ヘリコプターのライトで部屋の窓が光って、まぶしくて起きちゃう」という話を、小話のように笑いながら交わす学生。家族が普天間基地の一角の地主で、その地代収入で「自分の学費はたぶん全てまかなえている」と言う学生は、「矛盾は感じる。何とも言いがたい…」と言葉を濁す。若い米兵と交際する女子大生は、「今は幸せ。(基地がある事は)私にとってはプラスになった」と嬉しそうに微笑む。「バーに飲みに行くと、米兵たちと出会う。一緒に踊って楽しい」と言う男子学生…。

声高な賛否の激突の狭間で揺れ動く、若者たちの多様な本音。ここを捨象し構図を単純化することは、問題解決へのアプローチにはならない。現地でたくさんの話を聴いて、みわっちはそう感じたのだろう。悩んで悩んで、舌足らずな表現かもしれないが、彼女はリポートをこう締めくくった。

「確かに今回の事件で、学生たちは不安を感じました。しかし彼らにとっては、基地のある沖縄が故郷です。基地があることによって得られるものを手放したくない、と言う思いも抱えていました。彼らがそれを手放す覚悟をしたときに、沖縄基地問題は動くのかもしれません。」

ーーーー今回の過労死公開後、大手テレビ局のニュースでは、パソコンに向かって真剣に映像の編集作業をする学生時代の佐戸さんの姿が紹介されていたが、あの時に作っていたのが、まさにこの沖縄リポートだ。

YouTubeもまだ普及していない時期に、動画でこうしたリポートを作っては自分たちのグループのウェブサイトに搭載していた佐戸さんたち。メンバー全員の大学卒業で、そのサイトは閉鎖され、以後この動画もお蔵入りしていたのだが、コーチ役だった私と当時の仲間たちの判断で、今ここに再公開することにした。

今回の再びの米軍ヘリ墜落事故を受け、“みわっち”はきっと、「あの時のリポートをもう一度、皆に伝えたい!」と思っているに違いないから。

文:下村健一


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