米国の若年層の6%は新技術に職を奪われた経験がある(不破雷蔵)




新技術の導入は生産性の向上や安全性の確保のために行われるが、同時に人の仕事を奪い、賃金減や失職をもたらすこともある。米国における新技術と人の仕事の関係の実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査報告書「Automation in Everyday Life」(※)から確認する。

今調査対象母集団のうち就業者にとって、ワープロやスマートフォン、電子メール、工業用ロボットなど多様な新技術の導入は、仕事にプラスになると認識されている。

↑ 各技術が自分の仕事に与えている影響(2017年5月、米国、18歳以上の就業者)
↑ 各技術が自分の仕事に与えている影響(2017年5月、米国、18歳以上の就業者)

他方、新しい技術は既存の技術に従事していた人、代替された仕事に就いていた人の立場を奪うことになる。例えば昨今大手デパートで見かけるようになったセルフレジは、レジ打ちの人の分の人件費削減と人材確保難の解消が主な導入理由だが、同時にレジ打ちの仕事の機会が減ることを意味する。

新技術の導入が雇用主の判断で行われた結果、失職をしてしまった人、仕事領域が減って賃金が減らされたり労働時間が削られてしまった経験を持つ人は、どれほどいるのだろうか。属性別に見たのが次のグラフ。回答対象者は現在就業している人限定では無いことに注意。

↑ 雇用主の判断による機械やロボット、プログラムの導入で仕事や立場を失い、次のような経験をしたことがあるか(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 雇用主の判断による機械やロボット、プログラムの導入で仕事や立場を失い、次のような経験をしたことがあるか(2017年5月、米国、18歳以上)

全体では2%の人が失職、5%の人が賃金減や労働時間減を経験している。技術進歩の際の対価として切り捨てるのか、それとも重大な損失と見るべきか、判断は難しい。

もっとも属性別に見ると、単純にコスト的なものとして割り切るのは難しい実情も見えてくる。年齢階層別に見ると25歳以上は現役層に限れば大よそ同じ値だが、18~24歳に限れば失職経験率は6%、賃金減や労働時間減経験率は11%にも及んでいる。その層は就業年数そのものもまだ少ないことから、その中で経験率が高いのならば、実態としては上の年齢層よりも厳しい現状がうかがえる。イメージ的には新技術に対応するのが難しい高齢層の方が、失職などの経験を多く持つような気がするが、実態としてはむしろ若年層の方が高い。

これは多分に、経験や技術のつたない、まだ組織内でそれなりに必要な立場についていない若年層の仕事の方が、新技術に置き換えられやすいことによるものだろう。まだ人がやらねばならない仕事は新技術の導入でもその座を奪われることはないが、上記のセルフレジの例のように、単純な仕事は新技術に差し替えられ、従事していた人の立場は失われることになる。

人種別では白人よりも黒人、ヒスパニックの方が、年収別では低年収者の方が、就業形態別ではフルタイムよりもパートタイムの方が、新技術によって就業上の立場を失った、一部奪われた率は高い。新技術は単純な作業の自動化・非人力化が主な方向性だが、それによりその立場に従事していた人が取って代わられる実情を、改めて認識できる結果ではある。

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※Automation in Everyday Life

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p class=”multibr”>調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話の電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を元に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。




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