米国で「加熱式タバコ認可」に暗雲(石田雅彦)



 フィリップ・モリス・インターナショナル(以下、PMI)は現在、加熱式タバコのアイコス(iQOS)の販売申請を米国のFDA(食品医薬品局)に出している。米国ではまだいわゆる加熱式タバコの販売が許可されていない。

PMIは都合いいデータを出しているのか

 PMIが申請と同時に出した資料は何百ページにもわたる膨大なもので、微に入り細をうがった詳細なデータが添付されている。FDAは意見聴取やパブリックコメントの収集などの段階にあるが、11月13日に米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のスタントン・グランツ教授からPMI申請を却下することを求める文書(※1)がFDAへ出された。

 この文書によれば、PMIはすでに健康に対する潜在的に害を及ぼす可能性のある24のバイオマーカー(炎症、酸化ストレス、コレステロール、トリアシルグリセロール:中性脂肪、血圧、肺機能に関するもの)のデータを出しているが、24のうち23のバイオマーカーにはアイコスと従来の紙巻きタバコの間に統計的に有意な差はない、ということのようだ。また、同教授はPMIがこれらの違いを科学的に分析するための通常のテストをしなかったことを指摘し、意図的に分析データを無視していることを批難している。

 同教授は、日本のアイコスの場合、13のバイオマーカーが提出され、そのうち3つが従来の紙巻きタバコと違うことが示された、と言う。その中の1つは擬陽性が疑われるデータだが、日本の申請データは今回、米国FDAに出されたものよりもアイコスに有利だ。だが、これは日本人と米国人の間に潜在的にある生物学的な違いが影響しているかららしい。

 もちろん、これらのデータはすべてPMI側から出されたもので、今後はPMIからのバイアスが排除されたFDAの臨床試験が必要になる。同教授は、PMIのアイコスのデータは不十分かつ危険性を排除しきれていないため、むしろPMI自身がアイコスが既存の紙巻きタバコと同じと言っているのに等しく、FDAはまだ販売申請を受理する段階にはない、と主張している。

アイコスに新たな研究結果が発表される

 アイコスは現在、日本をはじめ、韓国、ロシア、カナダ、コロンビア、チョエコ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダなどで販売され、PMIによればすでに世界に370万人以上のユーザーがいるようだ。

 また、11月14日に行われた米国カリフォルニア州アナハイムで行われた米国心臓協会(American Heart Association)のプレゼンテーションで、同じカリフォルニア大学サンフランシスコ校のマシュー・スプリンガー教授らがアイコスのエアロゾルをラットにさらした際の血管機能の低下について報告している(※2)。これは確定的な研究発表ではないが、従来の紙巻きタバコとほぼ同じ機能低下が見られた、と言う。

 この研究発表は、米国の国立衛生研究所(NIH)とFDAから資金を提供されて行われたものだ。研究者は、この結果を踏まえてFDAは慎重に認可可否を決めるべきと言っているらしい。日本人と米国人が生物学的に違うはずもないが、日本呼吸器学会も加熱式タバコを含めた新型タバコには否定的だ。加熱式タバコが急速に広まっている日本ではFDAのアイコス販売に対する決定がどうなるか無視できない動向だ。



※1:Stanton A. Glantz, “PMI’s Own Data on Biomarkers of Potential Harm in Americans Show that IQOS is Not Detectably Different from Conventional Cigarettes, so FDA Must Deny PMI’s Modified Risk Claims.” Docket Number: FDA-2017-D-3001

※2:Matthew Springer, Ph.D., professor, cardiology, University of California, San Francisco School of Medicine; Nieca Goldberg, M.D., cardiologist and medical director, NYU Langone Joan H. Tisch Center for Women’s Health, New York City; Nov. 14, 2017, presentation, American Heart Association annual meeting, Annaheim, Calif.


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