「行方不明者は年間数百人」北朝鮮の漁民は命がけ…脱北の可能性は(高英起)




23日午後11時30分頃、秋田県由利本荘市の海岸に木造船が漂着し、近辺で国籍不明の男性8人が見つかった。警察によると、男性らは、朝鮮語のような言葉を話しており、北朝鮮から来たと話しているという。

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が板門店で韓国側に亡命した事件の直後だけに、船で集団で脱北したと見る向きもあるが、男性らは漁の最中になんらかの事故によって遭難し、秋田に漂着したものと思われる。北朝鮮の漁民たちは極めて劣悪な環境の下、文字通り命がけで操業しているからである。

金正恩氏の指示で下痢

遭難した北朝鮮漁船が、日本海側の沿岸に漂着する出来事はこれまでもたびたび起きている。2015年10月から2016年1月までの間に、北朝鮮の漁船と見られる木造船が14隻漂着し、31人の遺体が発見された。

当時、こうした出来事について北朝鮮の咸鏡南道(ハムギョンナムド)に住む内部情報筋は、「咸鏡南道だけでも漁に出て帰ってこない行方不明者は年間150人以上になる。年末に道の人民委員会と、道の保安局(警察)が集計した数字であり、咸鏡北道(ハムギョンブクト)や江原道(リャンガンド)を含めると数百人以上になるだろう」と述べていた。

(参考記事:北朝鮮、漁船海難事故多発…住民「行方不明者豊年だ」

遭難事故が起きる理由について、「無理をして操業していることが原因だ」と情報筋は語る。行方不明者の大多数は、個人の木工職人がいい加減につくった小舟レベルの小さな木造船で漁をしていたという。

慢性的な経済難のため、ほとんどの漁民が小さな木造船、それも故障が多い中国製エンジンを積み、通信装置なしで無理な操業をするため、時化やエンジンの故障などで遭難するのだ。今回のケースもこのパターンにあてはまると見られる。

遭難した漁船はイカ釣り漁船とされているが、北朝鮮で11月と12月はハタハタ漁が中心となる。ハタハタをめぐっては、こんなエピソードもある。金正恩党委員長が兵士達の食生活を改善せよとの指示で、食糧配給が大幅に増やされた。しかし管理が悪かったせいか、ハタハタのスープを食べた兵士達がひどい下痢を起こしたというのだ。

一方、比較的優遇されていた核・ミサイルをはじめとする兵器を開発し製造する軍需工場すらも、外貨稼ぎのために大規模な投資をして、イカ漁に乗り出している。イカは中国でも需要が多く、手っ取り早い外貨稼ぎの手段でもある。

(参考記事:金正恩氏の「兵器開発部隊」の財源は「イカ漁」だった

海に出るのは男たちだけではない。北朝鮮の市場で中心的存在である女性たちも漁業に参戦。女性の「網元」が日本海で荒稼ぎするケースもある。かつての日本同様、北朝鮮でも女性が漁船に乗り込むことをタブー視する風潮があったのだが、それだけ漁業が稼げるということだろう。

(参考記事:日本海で大暴れする北朝鮮の「オンナ漁師」たち

庶民達にとって漁業はハイリスク、ハイリターンの商売のようだ。金正恩党委員長も、水産関係の企業所や施設を頻繁に視察し、水産業に力を入れるよう檄を飛ばしている。しかし、現場では庶民が粗末な装備で、命がけで漁に出ざるをえない状況にある。金正恩氏は、そのことをどこまで理解しているのだろうか。




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