働き人がいる二人以上世帯の貯蓄性向の変化を通貨性・定期性預貯金の動向からさぐる(不破雷蔵)



通貨性預貯金は保有率で大きな変化は無いが…

お金は物品やサービスなどの価値を数量化して保存できる仕組みであり、現金として手元に置く他に、様々な形で専用の機関に預け入れ、財として積み増していくことができる。これを蓄財や貯蓄と呼んでいるが、貯蓄性向はどのような変化を示しているのだろうか。総務省統計局の全国消費実態調査(※)の結果を基に、勤労者がいる二人以上世帯における貯蓄性向の移り変わりを、通貨性預貯金と定期性預貯金の動向から確認していく。

まずは通貨性預貯金について。保有率は年を経るほどにいくぶん高くなる傾向があるが、際立った変化は無し。また経年でも法則を見出せる動きは無い。

↑ 世帯主年齢階層別通貨性預貯金保有率動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯)
↑ 世帯主年齢階層別通貨性預貯金保有率動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯)

経年変化は各年齢階層とも5%内外の動きに留まっており、誤差の範囲とも解釈できる程度。

他方、保有高はきれいな形で傾向だった動きが確認できる。

↑ 世帯主年齢階層別通貨性預貯金保有高動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)
↑ 世帯主年齢階層別通貨性預貯金保有高動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)

蓄財の積み重ねや稼ぎの増加もあり、年上になるほど保有高が高くなるのは納得できる話。他方、調査年別では明らかに昔よりも今に近づくに連れて、保有高は増加する傾向がある。全体平均では1999年と比べて2014年では2倍以上の額に増えている。

漸減する定期性預貯金

「貯蓄」の言葉のイメージとしては通貨性預貯金よりもピッタリくる定期性預貯金。保有率は漸減する傾向にある。

↑ 世帯主年齢階層別定期性預貯金保有率動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯)
↑ 世帯主年齢階層別定期性預貯金保有率動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯)

若年層より高齢層の方が保有率が高いのは通貨性預貯金と変わらない。他方、調査年による動向では明らかに昔よりも今の方が保有率が低い。きれいな形で昔の方が高保有率、今に近づくに連れて保有率が低くなる動きをしている。若年層に限らず定期性預貯金離れが生じている。

当然、保有高も似たように減少している。

↑ 世帯主年齢階層別定期性預貯金保有高動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)
↑ 世帯主年齢階層別定期性預貯金保有高動向(二人以上世帯のうち勤労者世帯、万円)

保有率との連動性もあることから、若年層の方が保有高は低く、高齢層ほど高い。しかし保有率の年齢による増加ぶりと比べると、保有高はより急なカーブになっていることから、保有している世帯別の保有高は、保有率の差異を大きく上回る形で高齢層の方が大きいことが容易に予想できる。

そして経年変化では保有率同様、昔の方が保有高は大きく、今の方が低い。保有高面でも定期性預貯金離れが確認できる。

経年変化に関して動向をまとめると、「通貨性預貯金では保有率に変化無し、保有高は増加」「定期性預貯金では保有率は減少、保有高も減少」となる。

通貨性預貯金と定期性預貯金を併用している人において定期性預貯金をしている人が減り、その分の貯蓄が通貨性預貯金に回ったとすれば、大よそつじつまは合う。他方、定期性預貯金のみを貯蓄とする考え方ならば、「貯蓄性向は減少中」なる表現も間違っていないことになる。

定期性預貯金が減少している理由はいくつか考えられるが、その最たるものは金利がゼロとほぼ変わらない低率となり、流動性の低い定期性預貯金として預け入れるメリットがほとんど無くなったからだろう。さらに、クレジットカードをはじめとして現金以外の支払い手段が増え、流動性の高い口座にある程度の金額を用意しておく必要性が増したのも、通貨性預貯金の必要性と保有高の積み増しの理由としては納得できる。公共料金や家賃をはじめ自動振り落としのサービスが増えているのも、流動性預貯金の保有高を高い水準で維持する理由の一つになる。

金利の低下とお金の利用環境の変化が、貯蓄のスタイルを変えていく。そう考えれば、貯蓄性向の変化も納得ができる次第ではある。

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※全国消費実態調査

家計の構造を「所得」「消費」「資産」の3つの側面から総合的に把握することを目的とした調査で、家計の収入・支出及び貯蓄・負債、耐久消費財、住宅・宅地などの家計資産を確認している。調査間隔は5年おきで、直近回は2014年9月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は二人以上世帯が5万1656世帯、単身世帯が4696世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。

同調査では貯蓄を次のように分類している。

・通貨性預貯金…普通銀行など、郵便貯金銀行(ゆうちょ銀行)。普通預貯金などが該当

・定期性預貯金…普通銀行など、郵便貯金銀行(ゆうちょ銀行)。定額郵便貯金、定期預貯金などが該当

・生命保険など

・有価証券…株式、株式投資信託、債券・公社債投資信託、貸付信託・金銭信託

・その他

今記事ではそのうち通貨性預貯金と定期性預貯金を取り上げている。生活資金の保全口座として用いる(公共料金やクレジットカードの引き降ろし先、給与の振り込み先、普段の生活費としての現金を引き出す場)口座は通貨性預貯金となるので注意が必要。また、手持ちの現金や知人への貸金などは貯蓄には該当しない。

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p class=”multibr”>なお(平均)貯蓄保有高は貯蓄をしていない人・している人合わせた上で平均を算出しているため、貯蓄保有率が少なからず影響する(貯蓄をしていない人は貯蓄保有高=ゼロとして計上される)。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。




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