MVPスタントン移籍の異常 マーリンズは「放出自体が目的」ヤンキースは「ハーパーより安い」(豊浦彰太郎)



まだ28歳でMVP&二冠王、それでもマーリンズは「とにかく放出しなければ」だった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)


大谷翔平のエンジェルスとの契約に続くビッグニュースだった。今季ナ・リーグMVPにして59本塁打&132打点で二冠王のジャンカルロ・スタントン(マーリンズ)のヤンキースへのトレード移籍が決まったのだ。これまでに、カージナルス、ジャイアンツ、ドジャースなどが移籍先として噂されていた。

トレードの内容をおさらいしておこう。スタントンと交換でヤンキースからマーリンズに移るのはレギュラー二塁手のスターリン・カストロと2人の若手マイナーリーガーだが、スタントンが2020年オフの契約破棄の権利を行使せずヤンキースに残留した場合のみ、マーリンズはヤンキースに3000万ドルを支払うことになっている。

そもそもデレク・ジーターらのマーリンズ新オーナーグループががスタントン放出を決めたのはその超弩級の契約のためだ。2014年オフに締結した13年総額3億2500万ドルの契約は後半ヘビーの金額配分となっており、来季年俸は今季の1450万ドルから2500万ドルに跳ね上がることになっている。そして、近年は故障に苦しんでいたスタントンも今季は59本塁打と大爆発した。彼の商品価値もいまがピークなのだ。

しかし、28歳と全盛期にあるMVPでも移籍先は簡単には決まらない。残契約がネックで、手出しできる球団は多くなかったのだ。落ち着く先は、やっぱりメジャー随一の金満球団ヤンキースだったのだが、同球団が2027年まで残る2億9500万ドルを引き受ける決断をしたのには理由がある。

来年オフにはナショナルズのブライス・ハーパー(2015年MVP)がFAになるのだが、彼を獲得するには総額3億5000万ドルから4億ドル級の10年契約が必要になると見られている。それからすると、スタントンの方が安いという見方もある。それでも、長期契約が残る選手の獲得には慎重になるのが普通だ。スタントンも契約最終年には37歳になる。今回もスタントン争奪戦で最も有望と見られていたドジャース(もともとスタントンは南カリフォルニア出身だ)は、この点への懸念を拭い去れなかったという。その点、DH制のア・リーグ所属のヤンキースには、「衰えが見えてきたらDHで」というテがある。マーリンズとの交渉においては、ヤンキースもドジャースもスタントンの高い年俸を中和するために、ソコソコ年俸の高い選手を交換にマーリンズに引き取らせようとしたのだが、ドジャースはエイドリアン・ゴンザレス(今季出場は71試合のみで来季年俸2236万ドル)やスコット・キャズミア(今季登板なしで来季は1767万ドル)といった完全な不良債権選手を引き取らせようとしたのに対し、ヤンキースは27歳と働き盛りで年俸もその働きぶりからすると割高ではない(残2年で2271万ドル)カストロをオファーすることができたのは、ヤンキースはドジャースとは異なりスタントンを掴むリスクを低減するDH起用という手段を持っていたことが影響したといえよう。カストロなら、マーリンズはこもオフのうちに戦力として他球団に売りつけ、若手有望株を獲得することができる。

しかし、MVPを獲得したばかりのスターが即放出されるというのも、マネーゲームで満ちたメジャーならではだが、マーリンズの放出先選択も、この大スターを活用し超トップクラスのプロスペクトを得る、ということより、どこならこのケタ違いの高年俸選手を引き受けてくれるか、どこなら完全トレード拒否権を持つスタントンが承認してくれるか、ということがポイントになっていた印象は拭えない。スター選手の切り売りはマーリンズの悪しき伝統だが、かつてはファイヤセールでファンの怒りと失望を招いても、その交換で専門家を唸らせる有望株を巧妙に獲得してきたものだ。しかし、今回ヤンキースから獲得したマイナーリーガー(投手のホルヘ・グーズマンと内野手のホゼ・デバース)はそれなりのプロスペクトだが、球界ナンバーワンのスラッガーの交換相手としてはチト地味だ。やはり、このトレードはマーリンズにとって、将来を担う若手を獲得することよりも、まずスタントンという経済的重荷から解放されることが目的だったのだ。

なお、スタントンのヤンキース入りで、来季オフにはハーパーも獲得しアーロン・ジャッジ、ハーパー、スタントンという夢の外野陣の誕生かと胸を躍らせているファンも少なくないだろうが、その可能性は低いだろう。スタントンを獲得してもまだ散財するだけの余裕があるなら、内野手に比較的人材を欠くヤンキースはむしろハーパーと同じく2018年オフFAのマニー・マチャド(オリオールズ)を狙う可能性が高いと思う。


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