モリス&トランメルの殿堂入りは祝福半分で課題半分(豊浦彰太郎)



トランメルはタ軍監督も務めたが03年にはア・リーグワースト記録の119敗を喫した(写真:ロイター/アフロ)


現地時間1月10日、1980年代最多勝利投手のジャック・モリスと遊撃手歴代8位のWAR(近年選手の価値を測るに最も信頼性が高いとされる統計学に基づいた指標)70.4を記録したアラン・トランメルの殿堂入りが発表された。2人は1984年タイガース世界一のメンバーでもある。彼らの栄誉には心の底から祝福を送りたいが、選出の課題も指摘しておきたい。

米野球殿堂入りには2つのルートがある。ひとつは全米野球記者協会(BBWAA)選出のもので、もうひとつは殿堂入り選手や野球史家などからなる特別委員会による選出だ。今回のモリスとトランメルは後者によるもので、メインルートであるBBWAA経由での資格失った者を対象とするいわば敗者復活戦だ。それこそ19世紀の選手やニグロリーグ・プレーヤーなど歴史に埋もれた名手の再評価も目的としている。また、BBWAA経由は選手のみを対象としているのに対し、こちらは監督、審判、背広組もカバーしている。そして、その選出は歴史を4つの時期に分け、セグメント毎に順番に選出を行なっている。今年は、1970年から87年までを対象とする「近代」(Modern Baseball)だ。

モリスは通算254勝で、前述の通り1980年代最多の162勝を挙げている。また、ツインズ在籍の1991年ワールドシリーズ第7戦での10回を投げぬいた完封勝利は球史に残る名場面だ。しかし、投手の実力を測る上で重要とされる通算のK/BB(奪三振と与四球の比率、近年では2.0前後が平均値)は1.78と凡庸で、通算防御率3.90は殿堂入りのどの投手より劣るなど、マイナス点も指摘されており、結局BBWAA経由での15年間の有資格期間(現在は10年)を使い果たし、2014年に資格を失っていた。ちなみに最終前年の2013年は、殿堂入りに必要な得票率75%にあと一歩の68%まで迫っていたが、最終年に61%に得票率を落としていた。通常、期限切れが迫ると投票権を持つ記者達の心理作用で票が集まるものだが、モリスの場合は逆だった。これは、2014年は空前の有力候補者ラッシュで、その割りを食ったとみられている。

トランメルもモリス同様に資格保持期間を使い果たし、2016年にBBWAA経由の候補者リストから名が消えたが、最高得票率は最終年の40%が最高とカスりもしなかった。しかし、前述の通り通算WARは殿堂入りに不足はない。近年のセイバーメトリクス的価値観の普及の賜物だろう。

彼ら2名の選出は、個々を取り上げるとなんら異存はない。しかし、1984年タイガース世界一コンビ(同球団はその後ワールドシリーズ制覇はない)とセットで捉えると、16名と少人数(BBWAA投票権者は400人以上)の投票者による特別委員会の選出の問題点も感じてしまう。投票者がこれくらい少ないと、投票前から各委員の間で「空気」が形成されがちなのではないか(これはあくまで私見だ)。いや、そもそも殿堂サイドから候補者がノミネートされる段階で「今回の目玉」を意識していると思う。何も各委員が談合していると言っているのではないが、投票する委員も殿堂側の「空気」を感じ取っていると思う。2014年に彼らが、トニー・ラルーサ、ジョー・トーリ、ボビー・コックスの2000勝監督トリオを選んだのも、「空気を読んだ」投票結果だとぼくは思っている。その意味では、モリスにせよトランメルにせよ、もし両名揃って今回初めて特別委員会の候補に名を連ねているのではなかったら、果たして一発で選出されたのか、チト疑問だ。

また、今回現役時代は強打の捕手として鳴らしたテッド・シモンズが合格ラインとなる12票(全16名の75%)にあと1票と迫る11票も集めたことには驚きを禁じ得ない。彼は確かに好選手だが、タイトル獲得や目立った記録達成もない(通算2472安打&248本塁打、WAR50.1)。正直なところ、通算288勝のトミー・ジョン(あのトミー・ジョンだ)や「ベーブ・ルースやジャッキー・ロビンソンと並び球界を変えた男」と評されるマービン・ミラー(選手組合専務理事で、それまで単なる御用組合でしかなかったMLB選手会を世界最強の労働組合に育成したと言われている)を上回る票を集めたのは、選出委員の中に、彼と同年代に活躍した元選手が6人も含まれていたおかげだと勘ぐらざるを得ない。


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