無理やり性転換手術を施され、女性にされてしまった殺し屋の復讐を描くウォルター・ヒルの『レディ・ガイ』(紀平照幸)



『ウォリアーズ』『48時間』『ストリート・オブ・ファイヤー』など、男の世界を描き続けてきたウォルター・ヒル監督が、初めて“女の闘い”を描いたことで話題になっているのが、この『レディ・ガイ』です。しかも、男性の凄腕の殺し屋が、無理やり性転換手術を施されて女にされてしまうという奇想天外なストーリー!

 裏社会にその名をとどろかせている殺し屋フランク・キッチン。依頼を受けては邪魔者を鮮やかな手並みで消し去ってきました。しかしある日、マフィアのボス、オネスト・ジョンの裏切りにあい、捕らえられてしまいます。昏睡から醒めた彼は全身を包帯で巻かれてベッドの上。包帯を取って鏡の前に立ったフランクは、変わり果てた自分の姿に愕然とします。そこに映っていたのはまぎれもなく女。フランクは意識を失っている間に性転換手術を施され、女性にされてしまっていたのです。ベッドの脇に置かれたテープレコーダーを再生すると、聞きなれない女性の声が流れてきました。彼女は自分が手術を行なった医師で、これがフランクに対する復讐だと言い放ちます。怒りに震えるフランク。“彼”は、自分から大切なものを奪った連中と女医に対する復讐を決意し、戦いを開始します。

 というわけで、見かけは女ですが中身は完全に男という異色の主人公の復讐劇が、ヒル監督お得意のハードボイルド・スタイルで描かれていきます。この物語、もともとは1970年代の終わりごろに監督のもとに持ち込まれたシノプシスが基になっていて、その時から監督は気に入っていたのですが、題材が題材ゆえに当時は映画化できなかったもの。それを後年、ヒル監督自身が原作者としてグラフィックノベル(コミック)化し、満を持しての映画化が実現したのです。

 主人公フランク・キッチンを演じるのは、『ワイルド・スピード』シリーズのミシェル・ロドリゲス。「男の心を持った女」を演じられるハリウッド随一の男前女優で、このキャスティングに異論のある人はいないでしょう。本作では、女性ならではの所作を捨て去り、見事に「女の姿をしてはいるが中身は100%男」という演技を見せてくれます。同時に、二度と男の姿には戻れない(男性機能は回復できない)という事実を突きつけられた哀しみと怒り、恋人関係になる女性に対する想いなどもしっかりと表現。体を張ったアクションを見せ、さらに男性時代のフランクまでも演じるという、まさに八面六臂の大活躍。

マッドなドクターを演じたシガニー・ウィーヴァー
マッドなドクターを演じたシガニー・ウィーヴァー

 対する狂気の女医レイチェル・ジーンに扮するのが『エイリアン』シリーズのシガニー・ウィーヴァーですから、新旧“強い女キャラを演じた女優対決”の夢の対決という側面も出てきます。シガニーはこれまで彼女が演じてきた“イカレている”系のキャラを集大成したような強烈な演技を見せていますが、監督は特に演技指導したりせず、役作りに関してはすべて彼女に任せたそうです。

 そんな二人を、TV『モンク』のトニー・シャルーブと『アイヒマン・ショー』のアンソニー・ラパリアというベテラン男優二人がしっかりとサポート。ヒル監督作品のトレードマークと言える、夜のシーンや雨のシーンは本作にもしっかり登場してファンの期待は裏切りません。また、原作がグラフィックノベルということで、場面転換などにマンガのコマ割りのようなシーンが挿入されていて、快調なテンポと奇妙な浮遊感を生み出しているのです。

(『レディ・ガイ』は1月6日から公開)

配給:ギャガ・プラス

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