これが興収1000億円を稼ぎ出したアジア歴代ナンバー1映画だ!『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』(紀平照幸)



 2017年の7月27日に中国で公開されて以来ランキング・トップを走り続け、国内の記録を次々と破って、公開わずか7日でアジアの歴代最高興収記録をあっさり更新しててしまった超大ヒット映画がこの『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』です。8月18日には観客動員数は1億4000万人に達し、ほとんど中国国内の成績だけで世界興収1000億円を突破。全世界歴代興収54位にランクインしました。これはアジア映画としては初のことで、あの『スター・ウォーズ/シスの復讐』よりも上なのです。

 この歴史的メガヒットとなった話題作ですが、内容は「中国版ランボー」とも言えるストレートなもの。

 元特殊部隊“戦狼”の一員だったレン(監督・脚本も兼任しているウー・ジン)が、マダガスカル海域で貨物船を襲撃中の海賊をたった一人で壊滅させるところから映画は始まります。3年前、義憤に駆られて民間人に手を出してしまったために軍籍を剥奪され、服役していたレンは、その間に恋人のロン(ユー・ナン)がアフリカで反政府勢力に殺されたと知らされました。手がかりは奇妙な紋様が記された銃弾だけ。レンは出所後、単身アフリカに渡り、ロンを殺した犯人を突き止めようとしています。

 その頃、アフリカの某国はラマンラ病という疫病と、レッドスカーフと呼ばれる反政府勢力に苦しめられていました。ついに大規模な武力衝突が発生。レンは逃げまどう人々を助けて中国大使館に誘導します。しかし、戦闘区域にはまだ数多くの同胞が取り残されていて、国連の批准がない限り、中国正規軍は出動できません。この窮地に立ち上がったのがレンでした。彼は罪なき人々を救うため、ただ一人で戦場に乗り込んでいきます。

 主人公レンに扮し、監督・脚本も手がけたウー・ジンは『SPL/友よ静かに死ね』『ドラゴン×マッハ!』などで活躍するアクション・スター。6歳で北京武術隊に入って本格的なカンフーを学び、全国大会での優勝経験もあり。ジェット・リーの弟弟子にあたり、香港アクション監督ユエン・ウーピンに見出されて映画界入りしました。そのジェットも出演した『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』でハリウッド・デビューも飾っています。本作では撮影中に負傷したものの、ケガを縫合すると撮影が遅れるからと、傷をボンドで接着して撮影に臨んだというエピソードも。

 この映画にはアクション監督として、ハリウッドから『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のサム・ハーグレーヴ、香港から『新少林寺/SHAOLIN』のウォン・ワイ・レオンを招き、世界レベルのミリタリー・アクションを完成。戦車も銃器も大量に動員し、派手な戦闘シーンの連続で飽きさせません。悪役には『パージ:アナーキー』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のフランク・グリロを起用。武術の達人でもあるグリロとウー・ジンの壮絶な肉弾戦がクライマックスになっています。

 しかし、これだけなら「よくできたアクション・エンターテインメント」の範疇を出るものではありません。なぜ、中国でこれほどのヒットになったのか。それはこの映画が中国人の自尊心と愛国心に強く訴えかけるものだからではないでしょうか。まず、戦争映画ではありますが、舞台となるのは他国であるアフリカの内部紛争であり、しかも描かれているのは救出ミッションという人道的なもの。アメリカの海兵隊すら民間人を見捨てて脱出したという状況下で、中国人だけが戦地に赴き人々を救出。その中にはアメリカ人の女医レイチェル(演じるのは香港女優のセリーナ・ジェイド)もいる、というのがミソなのです。敵は反政府軍の雇った傭兵部隊で、トップのグリロ以下、ほとんどが欧米人。それに立ち向かうのがレンと、元軍人の警備員ホー(ウー・ガン)、お坊ちゃん育ちのイーファン(チャン・ハン)といった老若取り揃えた中国勢といった図式にもなっています。

 まさにチャイナ・パワー炸裂という感じの映画ですが、国籍を離れて観ても楽しめる作品。悪役の卑劣さが徹底的に描写されているので、クライマックスでレンたちが窮地に陥る場面では思わず手に汗を握ってしまいました。

(付記)

実はこの作品、シリーズものの2作目で、前作『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊vsPLA特殊部隊』が日本ではDVDリリースされていますし、第3作の製作も予告されています。なお、ウー・ジンには『エクスペンダブルズ4』へ参加するかも、という噂も流れているのです。

(『戦狼/ウルフ・オブ・ウォー』は1月12日から公開)

配給:KADOKAWA

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