サントリー2連覇。沢木敬介監督、「ハードワークできたシーズン」を振り返る。【ラグビー旬な一問一答】(向風見也)




 日本選手権を兼ねた日本最高峰ラグビートップリーグのプレーオフトーナメントの決勝戦が、1月13日、東京・秩父宮ラグビー場であり、昨季2冠のサントリーがパナソニックに12―8で勝利。両タイトルでの2連覇を達成した。

 試合は序盤からサントリーが連続攻撃を仕掛け、前半を12―5とリード。後半こそパナソニックがボール保持率を上げるなど巻き返しを図ったが、要所でのミスが目立った。

 ノーサイド直前はサントリーが敵陣深い位置でボールキープも、肉弾戦での反則からパナソニックが攻撃権を獲得する。パナソニックは逆転勝利のチャンスを掴んだが、敵陣ゴール前でのラインアウト時に落球。サントリーが歓喜に沸いた。

 試合後はサントリーの沢木敬介監督、流大キャプテンが会見。普段は大勝しても辛らつな談話を残す指揮官だが、この日ばかりは喜びを語った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

沢木

「はい、皆さんお疲れ様でした。去年のチームを越えることをターゲットにしてきて1年間取り組んできて、きょうは、今季1番のベストゲームだったと思います。ハードなトレーニング、スタッフのハードワーク…。どこのチームよりもハードワークしたと自信を持って臨んだ試合でした。本当に我慢強く素晴らしいパフォーマンスだったと思います」

「ずっとこの日をターゲットに厳しいトレーニングを積んできたので、それが形となってすごく嬉しく思います。これだけレベルの高い試合をできたのは、相手のパナソニックさん、レフリーの方々、ファンの皆様、メディアの皆様のおかげです。ありがとうございます。

 試合は苦しい状況も多く、どっちに転ぶかわからなかったのですけど、練習量、フィットネスには自信があって、そこの差が少し出たかなと思います。

 皆が勝ちたい思いを強く持った結果、優勝ができて、本当に嬉しいです。僕らはインターナショナルスタンダードという目標を掲げていますので、満足せずにもっともっとレベルを上げて、日本のラグビーを引っ張っていけるよう頑張りたいと思います。ありがとうございました」

――当日までのピーキングについて。

沢木監督

「選手の自己管理です。まずは。選手の自己管理をするという意識が芽生えてきた。あとはメディカル、S&C、コーチングスタッフのハードワークだと思います。それによって、23人、ピッチに立っている選手はいいコンディションで臨めたと思います。

 GPS(グローバルポジショニングシステム=選手の走行距離などを測る装置として活用)をつけていますので、過去のデータを見ると、自分たちがいいパフォーマンスをするための状況についてのデータは揃っている。そのなかでも選手とスタッフがコミュニケーションを取って、進捗状況を日々、把握して、いいコントロールができたと思います」

――勝敗を分けたプレーは。

沢木監督

「最後のラインアウトもそうですが、ああいう状況はゲームのなかで何回もあったので、パニックにならず、いいコミュニケーション、いいディシジョン(判断)ができたと思います。

 サントリー、気持ちいいトレーニングをしないんですよ。流に聞けばわかりますけど、自己満足のトレーニングはしない。トレーニングの設計を厳しくしている。リーダー陣のいいコミュニケーションによってああいう状況でも、ベストな選択ができたと思います」

「まだ試合が終わったばかりで何があったかをそこまで覚えていないので、具体的に整理できていないのですけど…。ただ、本当に居心地よく終わる練習は少なく、不完全燃焼というか、100パーセントは出しているんですけど、何かが噛み合わないという練習が今シーズンは多くて…。

 試合の方でも、ウインドウマンス(11月の中断期間)もすごくいい準備ができたのに、NEC戦、近鉄戦などがうまくいかなかったりもした(勝利するも不満足な内容)。そういう経験があったので、クロスゲームをどう勝ち切るかを皆がわかっていたということもあった。

 最後の連続攻撃。パナソニックさんを相手にあそこまで連続で仕掛けられるのは僕らしかいない。最後は反則になりましたけど、あれだけアタックでフェーズを続けられた。最後は日和佐篤さん(スクラムハーフ)が出ていましたけど、アタックのマインドを持ってコントロールをしてくれたと思います」

――攻防について。

沢木監督

「自分たちはアタックのチームですが、勝つチームはディフェンスがいい。ディフェンスは態度の部分がよかった。また、一番いいディフェンスチームのパナソニックさんに対し、いいスペースを探し、そこにアタックできたと思います」

――後半はパナソニックに攻め込まれたが、3失点で抑えた。

「気持ちの部分です。システムは別として、ゴールラインを割らせない気持ちがあったので、最後は相手のノックオン、反則に追い詰めることができた。サントリーにはプライドタイムというものがある。特に苦しいゾーン、エリアに入った時にその言葉を出したら皆のスイッチが入るようにしている。ただ、今日は僕がその言葉を出していなくても、色んな選手がそれ声に出してそれを言っていて。『あ、大丈夫だ』と思って試合ができていました」

――スタンドオフのマット・ギタウ選手、インサイドセンターの中村亮土選手について。

沢木監督

「亮土は今シーズン一番、僕に怒られている。周りには世界レベルの選手がたくさんいる。向上心があって、レベルアップできていますが、まだまだサントリーのレギュラー確定というレベルではないと思います。(バックスには他に)小野晃征、田村煕もいる。選手層、競争のレベルは高くなっています」

「僕の負担を減らしてくれると思います」

沢木監督

「流が一番、亮土に厳しいですから」

「いやいや…。まずギッツ(マット・ギタウ)は、コミュニケーションを取りやすくするために日本語も覚えてくれて、僕のつたない英語でも伝わるようになった。ありがたく感じています。プレー面では、どのエリアで何をするかをクリアにしてくれました。

 亮土さんは、ゲインラインバトル(最前線でのぶつかり合い)で勝ってくれて、ディフェンスでも貢献してくれて。きょうはすごくよかったと思います」

――パナソニックの防御をどう攻略しようとしていましたか。

沢木監督

「まずはバックスペース(防御ラインの裏)。あとはショートサイド(狭い区画)、オープンサイド(広い区画)のディフェンスの配置を(見て)、どう判断させるか。細かいことですけどね。相手に的を絞らせないようなアタックのバランスが取れていたと思います」

――パナソニックでは、オーストラリア代表経験の豊富なスタンドオフのベリック・バーンズ、オープンサイドフランカーのデービッド・ポーコックが怪我で抜けていました。

沢木監督

「バーンズの途中交代は、ヤマハ戦(リーグ戦のゲームでの怪我の状態)から予測していました。後半、ポーコックがいなくなったことでは…。ブレイクダウン(接点)で、自分たちがコントロールしやすい状況になったと思います」

「ポーコックがいる時はボールも獲られていますし、スローダウンさせられたのは確かです。ただ、そこに対応するためのトレーニングはしてきましたしいたからどうか、いないからどうかということは、僕のなかでは感じなかったです。

 ただバーンズに関しては、いままでパナソニックのラグビーを操っていた選手。(離脱は)僕らがどうこうというより、パナソニック自体に影響があったのかもしれないです。僕は、わからないですけど。もちろん(代役で出た)山沢拓也も、キック、ランという持ち味は出せていた。選手層が厚く、手ごわいチームだと思っています」

――2連覇へのマネジメント。

沢木監督

「今季の我々のスローガンはステイハングリー。成長が止まれば衰退の始まりだと思うんですよね。1日、1日、少しでもいいので成長しながら、去年のチームを越える。そうすれば必ず優勝できる。皆がそれを信じながらハードワークできたシーズンだったと思います。

 リーダー陣が勝つためにやるべきこと、大事にすべきことを、いいコミュニケーションを取りながら、僕からのプレッシャーに負けずに、フフフ…。向上心を持って去年のチームを越えるという気持ちが、芽生えてきていると思います。

 勝ったから言えますが、最後のシーンも、流れ的に言ったらパナさんの流れだった。そこでフォーカスを明確にするコミュニケーションと、いいディシジョンメイキングで、また流れを引き戻す…と」

――今後のサントリーの目標設定。

沢木監督

「6月に、スーパーラグビーのチームと対戦予定です。今年は我々だけじゃなく、パナソニックさんもハイランダーズとやっていますし、トヨタ自動車もレベルズとやっています。いいチャレンジができる環境をたくさん作るのが、日本ラグビーの成長に繋がると思う。自分たちの大事にしているのはインターナショナルのスタンダード。チャンピオンは全チームのターゲットになりますが、それを優勝チームのご褒美だと思って更なるチャレンジをしたいと思います」

 サントリーは流のキックが「バックスペース」を突いたり、ギタウのパスが大外や接点周辺で待つランナーを活かしたりと、効果的な仕掛けで魅した。パナソニック陣営が連携や立ち位置のひずみを嘆いたのとは対照的だったか。




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