プロ野球「申告敬遠」議論の問題点 その2 全体時短戦略見えず唐突感いっぱいの申告敬遠(豊浦彰太郎)



敬遠のようなインプレーの所作に手をつけるのは最後の最後にすべきだ(写真:ロイター/アフロ)


申告敬遠について、その11ではファンのリアクションについて書いた。今回は時短議論全体について述べたい。今回のNPBによる申告敬遠導入は非常に唐突だ。本来、時短においては、◯年以内に◯分短縮したいという目標があって、それをイニングインターバルや投手交代時間のようなボールデッド状態と、投球間隔などのインプレー中の2つのエリアに分けて 複数の実行案が提案されるべきだ。そして、その複数の案を時短効果とベースボール本来の姿を損なわないことという2つの視点から優先順位を付けて実施していくべきだ。申告敬遠をぼくは必ずしも否定しないが、これはこれで1つの案でしかないはずだ。ところが、これが単独でポーンと出て来ている。この点だけを捉えても、NPBに何ら戦略性がないことが伺える。

そんな視点で評価すれば、申告敬遠はインプレー中の所作に手を付けるという点でもっとも後回しにされるべきことだ。ある意味ではこれは本塁打後のベース一周を割愛することと同レベルだ。その前にイニング間や投手交代時の時間短縮を模索するべきだし、その次は投球間隔だろう。いっそのこと、同一イニング間の投手交代回数を制限しても良いと思う。ここまでは、この競技の本来の姿を変えてしまうものではない。申告敬遠などはその後だ。本末転倒も甚だしい。

また、時短を議論していると必ず「試合自体が白熱していれば時間など長くても問題ない」という意見が必ず出てくる。実際、ぼくが寄稿させていただいている某誌でも1年前にMLBでの申告敬遠導入決定を受けて、各ライターの時短に関する意見を掲載したのだが、その時こともあろうか編集長が「スターが増えゲーム自体がもっと面白くなることが最大の解決策」という主旨のまったく頓珍漢な意見を書いてぼくを大いに狼狽させた。

これはファンサービス策を議論する際に、「勝つことが最大のサービス」と主張するのと同じくらいズレた意見だ。毎日勝てるわけでは無いということが出発点にあり、だから負けた日でもファンにミニマムの満足感を持って球場を後にしてもらうにはどうすれば良いか?ということを考えなばならないのに。

同様なことが時短にも言える。例え4時間掛かっても逆転に次ぐ逆転という展開ならお客は長さを感じないかもしれない。しかし、残念ながら長いシーズンではその何割かは一方的で退屈な展開なのだ。

それと、時短努力にはゴールがないことも認識すべきだ。放っておくと試合時間は現状維持ではなく長くなる。それは年々戦術は進化していくからだ。例を挙げよう。投手交代の頻度は増し、一球ごとにベンチからのサインで野手は守備位置を変える。これらは全て試合時間を長引かせている。場内の演出もそうだ。ぼくは、MLBは本当に時短がやりたいなら、一部の球場では毎試合行われているセブンスイニングストレッチ前の「ゴッド・ブレス・アメリカ」の演奏を止めるばきだと思う。


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