<コラム>中国ビジネスで成功するには、「裸の王様」にならないことが重要



日本でも中国でも責任者が自分の周囲に子飼いのような部下を配置し、運営をする人が少なからずいるようです。日本ならいざ知らず、中国で責任者を張っている日本人が同じようなことをやると、施策が的外れになり、一般社員からソッポを向かれたりすることになりかねません。中国ビジネスを健全に発展させたければ、そういった愚かなことは廃さなくてはなりません。「脱お友達」は政界だけのことではないのです。

●長い歴史の中国

日本から2泊3泊程度の出張に来て、さも中国がわかったようなことをいう日本本社のお偉いさんは論外として、中国現地に駐在して何年か経つとわかったような気になります。しかし、何千年もの歴史につながった現代中国ですから、その程度のことでわかるわけはないのです。

中国ビジネスを展開する日本人の最大の武器は、日本の市場競争の中で揉まれてきた経験です。その経験をもって、中国市場の中で拡大戦略や施策を打とうと考え、是非について自身を取り巻いている中国人幹部社員に意見を聞きます。

●総経理に異を唱える社員は貴重

中国人社員にとって「総経理」は絶対的ですから、よほどでない限り異を唱える中国人幹部はいません。すると総経理は自分の方針が正しいと判断し実行することになります。場合によってはピント外れなことをやってしまうことになります。そんな悲しいことが起こらないようにするには、自分の周りの中国人幹部の中に「物を言う」「異を唱える」ことができる人も置いておくべきです。

私は成長軌道に乗っていた大連の会社をさらに発展させる段階で、部門責任者であった中国人幹部社員4人を副総経理(副社長)格に任命しました。彼らに経営幹部として日常の運営を仕切ってもらうとともに、会社方針やさまざまな施策を打つときに、事前に彼らの意見を聞いてその是非や修正を行うようにしました。

概ねは私の考えに同意を得られますが、その中の1人だけ、時々異を唱えるのです。それはよくないとか、修正すべきであるなどの意見を言ってくれます。そういう時には、その理由を聞いて私が納得したときには修正をしました。何回かそんなことがあり、おかげで的外れなことになりませんでした。

もし、皆が「イエスマン」であったらと思うとぞっとします。もちろん、中には絶対に譲れないこともあって、そんな場合には私の考えをさらに詳しく説明し、相手が納得するまで説得したりもしました。

●中国現地をわかっているのは中国人

総経理と言っても人の子。常に正しい判断をしているとは限りません。まして異国で会社を運営している日本人としてはなおさらです。会社の総責任者である総経理が、もし正しくない判断をした時は会社としての問題となります。その影響は業績の低迷や現地社員の離反といった現象になって現れます。

現地のマーケットや社会のこと、一般社員の現場における悩みなどなど、私よりははるかによくわかっているのが中国人幹部です。総経理に対して異を唱え、現地に根差した意見を言ってくれる、いわば「反対勢力」の存在はむしろ必要だと考えます。

●総経理を裸の王様にするかしないかは自身にかかっている

中国古来の「我を非として当たる者は吾が師なり」という荀子の言葉を肝に銘じるべきです。総経理として、自分の周辺に反対意見を言ってくれる人も置くべきである、というのが私の持論です。自分の意見を堂々と主張できる部下の存在は、実は総経理である自分を成長させてくれる存在でもあります。ひいては業績の拡大に寄与することになります。

自分になびいてくれる人ばかりで周囲を固めた方が、会社運営はやりやすいと思います。しかしそうすると正しくない判断をした時や暴走した時に諫めてくれる人がなく、結果的には会社運営がうまく行かなくなってしまいます。

荀子は「我に諂諛(てんゆ=こびへつらう)する者は吾が賊なり」とも言っています。おべっかや耳触りの良い言葉を発してくるような人は賊と思えということも同時に忘れてはなりません。会社の業容を拡大させるうえで、総経理である自分を「裸の王様」に祭り上げさせないことが大事です。その責任は総経理自身が負うべきであると思います。

●中国ビジネスの持続発展を望むなら…

(1)ものをいう幹部を総経理の周辺に置き、その意見に耳を傾ける。
(2)意見が会社のためか、彼自身の利益のためか、総経理が判断する。
(3)総経理は方針などの修正を検討する。
(4)実行する。必然的に成功する。

とはいっても、自分の周りは反対意見を言ってくれる人ばかりでは疲れてしまいますので、取り巻きの半分以上は「イエス」を言ってくれる人が好いと思います。凡人の私が楽しく正しく、そして力強く会社を運営するための智慧です。

■筆者プロフィール:曽賀善雄
1949年和歌山県生まれ。1971年大手セキュリティサービス会社に入社。1998年6月、中国・上海のグループ現地法人の総経理(社長)として勤務。2000年4月から13年近くにわたり中国・大連の現法で総経理(社長)として勤務。2013年1月に帰国、本社勤務を経て2014年7月リタイア。




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