信じ難く美しいぶっ飛びオナラ映画『スイス・アーミー・マン』



<孤独なダメ男とピュアな死体のサバイバル物語は「死体がオナラをする映画」>

まず断っておくが、死体はオナラをする。それも、そのパワーで海を渡れるほど盛大に。

サンダンス映画祭のプレミア上映でお上品な映画関係者がたまりかねて退場した瞬間から、『スイス・アーミー・マン』は「死体がオナラをする映画」として知られることになった。

実際、この映画では死体がガスを出しまくる。それでもスカトロ趣味まるだしの映画を見て心が洗われることだってある。この映画が立派な証拠だ。

見捨てられた漂流者と、彼の心を癒やすフレンドリーな死体。無人島での奇妙な出会いで始まる物語は、切なくも心揺さぶる「バディ映画」に発展する。設定も荒唐無稽なら、ギャグも下ネタずくめで、観客は唖然とさせられるが、有毒ガスに負けず最後まで付き合ったら「見てよかった!」と思うはずだ。

観客が最初に出会うのはハンク(ポール・ダノ)。無人島の浜辺で絶望のあまり首つり自殺をしようとしている。そこに死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクがメニーと名付けたこの死体は、孤独なハンクの相棒になる。ハンクは何も知らないメニーに愛や孤独、マスタベーションといったこの世界の大事な事柄を教える。

そうこうするうち、ハンクはメニーの持つ不思議な力に気付く。例えば、メニーの体の「ある部位」は森で迷ったときにコンパス代わりになる。メニーはサバイバルに役立つスイス・アーミー・ナイフばりの万能ツールなのだ。ハンクはメニーを使って水や食糧を確保し、森の中に秘密基地まで造る。

1日の終わりには未来を夢見る2人(1人と1体)。文明世界に戻り、愛する女性に巡り合えたらどうなるか、ハンクはメニーに教えるために手作りのカツラを着け、憧れの女性に扮してみせる。それでなくてもぶっ飛んだ映画だが、むさ苦しい女装男と青白い死体が恋人ごっこを繰り広げるに至って、ぶっ飛び度はマックスに達する。




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