変化の激しい環境ほど、弱者にチャンスがあるのはなぜか(ダイヤモンド・オンライン)



 作家であり、金融評論家、社会評論家と多彩な顔を持つ橘玲氏が自身の集大成ともいえる書籍『幸福の「資本」論』を発刊。よく語られるものの、実は非常にあいまいな概念だった「幸福な人生」について、“3つの資本”をキーとして定義づけ、「今の日本でいかに幸福に生きていくか?」を追求していく連載。今回は「ビジネス戦略と幸福の関係」について考える。

● 弱者の3つの戦略

 自然界における生き物の戦略はビジネス戦略を考えるうえでも役に立ちます。

 じつはこれは、「生き物を比喩にビジネスを語る」ということではありません。生き物には40億年の長い進化の歴史がありますが、それは同時に「ナンバーワン」をめぐる激しい競争の歴史でもありました。そしてそのなかで、人間の知能で考えつくような「戦略」はすべて試されているのです。

 たとえば、弱者と強者では最適戦略が異なります。

 「自分だけのニッチ」を見つけたとしても、そこに永遠に安住できるわけではありません。強者は弱者とたたかえば確実に勝てるのですから、その最適戦略は弱者が開拓したニッチに入り込んで自分の棲む場所を広げることです。

 これをビジネスに当てはめると、大企業がシェアを拡大するもっともかんたんな方法は、中小企業を模倣して彼らが開拓した新しいマーケットを奪うことです。しかしそうなると、弱者は滅びるしかないのでしょうか。じつはそうではなく、彼らには生き延びるための「弱者の戦略」があります。

 生物学者の稲垣栄洋氏はそれを次の3つにまとめています。

 (1)小さな土俵で勝負する
 強者には侵略できるニッチに「小ささ」という物理的限界があります。弱者はそれを利用して、身体を小さくすることで強者の侵入を防ぐのです。昆虫はこの戦略を上手に使っていますが、ビジネスでも自営業や家族経営まで規模を小さくすることで大企業にはアクセスできないニッチを見つけることができるでしょう。

 (2)複雑さを味方につける
 戦国時代の合戦では、平地での戦いに持ち込まれれば多数の軍勢を要する強者が圧倒的に有利になりますから、弱者は険しい山や谷のある場所に城を構え、複雑な地形を利用して逆転のチャンスを狙います。
 これは、「ルールがシンプルなゲームは強者に有利になる」ということでもあります。

 リオオリンピックの陸上競技がよい例で、100メートル走では日本人選手は世界最速のウサイン・ボルトにまったく歯が立ちませんが、バトンの受け渡しでルールが複雑化した400mリレーではジャマイカチームと互角にちかいたたかいをすることができました。

 これをビジネスにたとえるなら、大企業が得意な大量生産に適さない、異なる仕様の商品を小ロットで適切に流通させる複雑なマーケットをニッチにする戦略が考えられます。

 (3)変化を好む
 先ほどの複雑さは地形(平面)ですが、こちらは時間軸の複雑さ、すなわち予測の困難さのことです。

 生き物の置かれた環境がずっと安定しているのなら、強者はさまざまな戦略を組み合わせることで、弱者のニッチを時間をかけて奪っていくことができるでしょう。変化のない安定した環境は生き物にとって過ごしやすそうですが、そこで棲息できる生物の数はじつは少ないのです。海、陸上、空などの大きな空間が安定していれば、そこでナンバーワンになった強者しか生き残れないのです。

 じつはこのことは、アメリカの生態学者コネルが「中程度撹乱仮説」として提唱しています。

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