「地銀の7割は5年後に赤字」金融庁の試算を再現してみた(ダイヤモンド・オンライン)



 10月25日、銀行の監督官庁である金融庁は「地銀の過半数が本業赤字」という試算結果と、2017年3月期の本業の利益とその前期との比較に基づいた散布図を公表した。週刊ダイヤモンドはこの図を再現し、地銀が抱える苦悩の核心に迫る。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大、鈴木崇久)

【地銀の実名が入った散布図の再現図はこちら】

 「今後、ビジネスモデルに深刻な問題のある地方銀行には、立ち入り検査を行っていく」──。

 今年10月下旬、こう言い放ったのは、銀行の監督官庁である金融庁の森信親長官だ。地銀の頭取が一堂に会する場でのことだ。

 この発言を聞いて、耳を疑った金融関係者は少なくない。というのも金融庁は、かつて不良債権問題を抱える銀行に立ち入り検査を行い、その処理を厳しく指導してきた検査局を来年にも解体するなど、「脱・金融処分庁」の路線を打ち出しているからだ。

 何が起きているのか。実は、この発言は“処分庁”への逆戻りを意味しているのではない。むしろ地銀との“対話”に本腰を入れようとする、金融庁の腹積もりがにじみ出ているといえる。

 これまでも、変革に積極的な地銀は存在していた。例えば、金融庁の考えやアイデアを聞いて、現場にそれらを伝える地銀の頭取などがそうだ。ところが、あまり成果が出ず、ある金融庁幹部は「評判のいい頭取でも必ずしもパフォーマンスがいいとは限らないのはなぜなのか、ずっと疑問に思っていた」と困り顔だった。

 だが今後は、文章でのやりとりでは分からないような悩みを対面で聞き出し、改善状況を継続的にフォローしていくことを目的に、地銀に乗り込んでいく考えだ。

 前出の金融庁幹部も、「頭取に問題があるのか、それとも現場が動いていないのか、何が原因でもうけられないのかは、頭取をはじめとしたいろいろな人と話さないと分からない」と、立ち入り検査という名目で、地銀と対話することの意義を説く。

 ただし、このように金融庁は対話を重視するとはいうものの、地銀に対する姿勢は厳格そのもの。それは、この会合で森長官が述べた、地銀の行く末を占う恐るべき“予言”に表れている。

 「5年後に、約7割の地銀で本業の収益がマイナスになる」──。

 この予言を明示したといえるのが、この会合から数日たった10月25日に公式発表された、「金融レポート」だ。

 金融レポートとは、金融庁が金融行政における1年間の進捗や実績をまとめた資料のこと。今年は昨年に続いて2回目の発表となったわけだが、昨年の金融レポートには金融庁の腹の内がありありと記されていたこともあり、多くの金融関係者が今年の発表を待ち構えていたものだ。

 とりわけ昨年の金融レポートで金融関係者の注目を集めたのが、独自の試算結果に基づく地銀の収益予測だった。

 もともと金融庁は長年にわたり、全国的な人口減少に伴う資金需要の低下が地銀の収益環境を悪化させると警鐘を鳴らし、地銀に対してビジネスモデルの見直しを訴え掛けてきた。

 その中で金融庁は、地銀の本業である個人や企業への融資業務に加え、投資信託などを窓口で販売する手数料ビジネスの二つに焦点を絞った。さらに、これらを顧客向けサービス業務、すなわち「本業の利益」として、それぞれの地銀でどれだけ利益を生み出しているかを計算し、記載したのだ(詳しい計算方法は図「金融レポート「顧客向けサービス業務」の散布図の再現」参照)。

 その結果、2015年3月期の決算で、4割の地銀において本業の収益がマイナスに陥っていると指摘、さらに今後の人口動態予測を加味して将来収支を分析したところ、10年後の「25年3月期には6割を超える地域銀行がマイナスに陥る」という、地銀にとって衝撃的な予想を記している。

 そして、前回の試算から約1年。今年の金融レポートでは、17年3月期決算を基に同様の試算を行い、昨年を上回る驚きの予想が示された。すでに過半数の地銀が本業赤字に陥っているのに加え、前述の「5年後に約7割の地銀が赤字」という森長官の発言に表れているように、本業の収益が「(昨年度の)推計・試算を上回るペースで減少している」という将来予想が示されたのだ。

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