ロボットのアイドルは人間を超えるか? 「ニコ生」で育つ「アンドロイドルU」誕生 「ぐぬぬ」もその場で学習



 「アイドルは、人間よりアンドロイドの方が適しているのかもしれない。いつも笑顔で疲れないし、トイレにも行かない」――アンドロイド研究の第一人者として知られる、大阪大学の石黒浩教授はこう語る。

画像
アンドロイドル「U」


画像
「近くで見るとすごいんですよ」と「U」を見つめる夏野剛さん(左)と石黒教授


 石黒研究室と、動画サービス「niconico」を運営するドワンゴ、ファッションビル「PARCO」を運営するパルコは2月15日、自律的に対話や学習ができる人工知能(AI)を搭載した女性型アンドロイド「U」を、ネットユーザーとともにアイドルとして育成するプロジェクトを発表した。

 「U」は、「ニコニコ生放送」に“生主”として出演し、言葉やコミュニケーションを学習。PARCOの店舗で接客などを行う。プロジェクトを通じ、アンドロイドのアイドル「アンドロイドル」が社会で受けいられるかを検証する狙いだ。

「ニコ生」で学習して自律で会話、「ぐぬぬ」もその場で学習

 「U」は、目や口がなめらかに動き、音声で発話できる女性型アンドロイドで、22歳という設定。頭脳は「ラップトップのWindows PC 1〜2台」(石黒教授)でできており、遠隔操作と自律制御で会話する。

画像


画像


 昨年12月、「ニコニコ生放送」で“生主”としてデビュー。当初は人が遠隔操作していたが、視聴者からテキストで投げかけられるコメントを学習することで、自律的に対話する能力を高めてきた。

 ニコ生では、視聴者が一斉に投げかけた多数のコメントから、“生主”が答えたいものを選んで対話できる。「U」は多数のコメントを一度に学習できる上、答えやすい質問だけを選んで回答できるため、1対1のコミュニケーションより円滑な対話が可能という。

 さらに、アンケート機能を使えば、視聴者による評価も簡単に調査できる。「実験室でアンドロイドを評価する場合、10人からせいぜい100人程度の評価しか得られなかったが、ニコ生なら瞬時に数万人単位にアンケートが取れる。すごく強力なツールだ」(石黒教授)。

 これまでに、ニコ生を通じて約4000パターンの対話データを学習してきた。学習済みの対話パターンと、答えられない質問は無視して勝手にしゃべる自発的な発話を組み合わせることで、完全自律会話も可能になってきたという。

 15日に「ニコファーレ」(東京・六本木)で行われた発表会では、「U」がニコ生ユーザーからの質問にリアルタイムに回答。「何歳?」という質問に「22歳。生まれた時から22歳ではあるんですけどね」と答えたり、「円周率どこまで言えるの?」という問いに「3.1415926535ぐらいです。円周率全部覚えるのはなんか、メモリの無駄な気がして」と返したり、「ぐぬぬ」というコメントを学習し、「ぐぬぬ。ぐぬぬ。ぐぬぬ」と繰り返し言って会場をわかせた。

 今後は、東京・池袋の「ニコニコ本社」のサテライトスタジオで公開生放送を行ったり、「U」の“寝姿”をニコ生で朝までライブ配信する計画。「ニコニコ神社」で巫女としてアルバイトしたり、「池袋PARCO」で受付嬢やイメージガールとして働く――などの活動も予定している。

「世界を変えたいなら、世の中にロボットを出さないと」

 石黒教授はこれまでに、本人そっくりの「ジェミノイドIH」や、夏目漱石そっくりの「漱石アンドロイド」など、人間そっくりのアンドロイドのほか、人として最小限の見かけと動きの要素のみを備えた「テレノイド」など多数のロボットを開発。人とロボットコミュニケーションや、「人間らしさ」とは何かを追求してきた。

 「対話型ロボットは、研究室の中だけで評価しても本当の意味で人と関わるロボットにはなれない。本当に世界を変えたいなら、世の中にロボットを出さないと」――ドワンゴやパルコとの協業の狙いを、石黒教授はこう語る。

 プロジェクトを通じてアンドロイドを社会に“デビュー”させることで、社会の反応をダイレクトに得ながら、改良を進めたい考え。対話型ロボットを人間同士のコミュニケーションに介在させるなどして「人と人とがもっと自由につながる社会を作りたい」という。

画像
石黒教授(中)と夏野さん(左)、パルコの泉水隆常務


 ドワンゴの夏野剛取締役は「AIと人間がどう近づくかに会社を挙げて関心がある。このプロジェクトを通じてみなさんが経験したことのないようないろんなことを試して世に出したい」と話している。




Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


こんな記事もよく読まれています



コメントを残す