軍事とIT 第197回 ソナー(1)ソナーの種類と用途



本連載の第92回~100回目で「水中戦とIT」と題するテーマでいろいろ書いた。その際に「海中ではレーダーが使えないので音響を用いる」という話はしたが、その主役であるソナーに関する話をあまり詳しく取り上げていなかった。そこで改めて、ソナーの話をしてみようと思う。

そもそも、ソナーとは

日本ではカタカナで「ソナー」と書くことが多いが、実はSONAR(SOund NAvigation Ranging)という頭文字略語である。「音響による測位・測距」というぐらいの意味だ。

時々、ソナーのことを超音波探知機と書く事例があるらしいが、実際のところ、超音波を使用する例は限られている。ソナーの用途のうち、最もポピュラーと思われる潜水艦の探知では、もっと低い可聴周波数範囲内(20Hz~20KHz)の音波を使うことが多い。

可聴周波数より高い周波数の音波を使うのは主として、高い分解能が求められる機雷探知ソナーである。レーダーと同じで、周波数が高くなるほど分解能が向上する傾向がある。

まず、ソナーには、「アクティブ・ソナー」「パッシブ・ソナー」という機能的な分類がある。

アクティブ・ソナーとは、自ら音波を発して探信を行い、その反射波をとらえることで目標の方位と距離を把握するもの。民間では同じ機能のものが魚群探知機として広く使われている。第2次世界大戦の前にはすでに実用化されていて、開発を主導した連合国の委員会の名前をとってASDIC(Allied Submarine Detection Investigation Committee)と呼ばれていた。しかし戦後は、アメリカ式にソナーというようになった。

パッシブ・ソナーとは、聞き耳を立てるだけの機材だ。昔、日本で「水中聴音機」といっていたものと同じである。探知目標が発する音を聴知するものだから、方位はわかっても距離はわからない。その代わり、アクティブ・ソナーと違って、こちらがソナーで聞き耳を立てていることは、探知した相手にはわからない。

つまり、電波兵器におけるレーダーに相当するのがアクティブ・ソナーで、ESM(Electronic Support Measures)に相当するのがパッシブ・ソナーというわけ。前者は距離と方位の両方がわかるが、後者は方位しかわからないところも共通している。

ソナーの設置方法による分類

ソナーを実現するには、水中を音波が伝わることで発生する振動を電気信号に変換するデバイスが必要である。

アクティブ・ソナーの場合、送信と受信を兼用するのでトランスデューサーといい、これは要するに水中スピーカーだ。対するパッシブ・ソナーの場合、受信専用でハイドロフォンといい、これは要するに水中マイクだ。

このトランスデューサーやハイドロフォンは、方位の把握を行えるように、小型のものを複数並べて配置する。横一列に並べただけでは、方位はわかっても深度がわからないから、普通は縦・横に並べて3次元配置にする。これをソナー・アレイという。

そのソナー・アレイを設置する場所による分類もある。主なものは以下の通りである。

バウソナー

水上艦の艦首直下にソナー・ドームと称する張り出しを設けて、その中に円筒形のソナー・アレイを設置する。大型のアクティブ・ソナーを設置する際のポピュラーな方法。

ハルソナー

水上艦の船体下面、艦首よりだいぶ下がった辺りにソナー・ドームと称する張り出しを設けて、その中に円筒形のソナー・アレイを設置する。小型のアクティブ・ソナーを設置する際のポピュラーな方法。用途によっては、旋回できるようにした平面アレイ・ソナーを設置することもある。

側面ソナー

船体の側面にソナー・アレイを貼り付ける方法で、パッシブ・ソナーを設置する方法の1つ。潜水艦ではフランク・アレイと呼ぶことが多く、側面に1つ、あるいは複数の四角い出っ張りを作る。水上艦では導入事例は少ないが、海上自衛隊の「ひゅうが」型護衛艦はバウソナーのドームを後方まで円筒形に伸ばして、その側面に側面ソナー・アレイを配置している。

曳航ソナー

パッシブ・ソナーを構成するハイドロフォン・アレイを縦にズラッと並べて、それをケーブルで曳航するもの。使用する時だけ繰り出す仕組みで、使用しない時は巻き取って艦内に収容する。わざわざケーブルで後方に曳航するのは、自艦のエンジンなどが発する騒音を拾わないようにするため。水上艦でも潜水艦でも使用例がある。

可変深度ソナー(VDS : Variable Depth Sonar)

アクティブ・ソナーを流線型のカバーで覆った「フィッシュ」と呼ばれる航走体に納めて、艦尾から海中に降ろすもの。曳航ソナーと違うのは、長いアレイを構成していないところ。水上艦がアクティブ・ソナーを設置する方法の1つで、バウソナーやハルソナーと違って、海中深く(といっても限りはあるが)まで降ろして海面より下の温度層を探れる利点がある。

吊下ソナー

アクティブ・ソナーをケーブルで海中に降ろすもの。VDSや曳航ソナーと違うのは、停止して使用すること。ヘリコプターが潜水艦を探知する際に使用するほか、掃海艇が使用する機雷探知ソナーも、このタイプに属するが、こちらは船体中央付近から下に降ろす。

横須賀に前方展開している米海軍のイージス巡洋艦「シャイロー」が、乾ドックに入っているところ。艦首直下に設けられたバウソナーのドームが明瞭に分かる。ドームがぶつからないように、艦首部分だけドックの底が深くなっている Photo : US Navy

なお、曳航ソナーと言えば、パッシブ・ソナーというのがかつての通り相場だったが、最近アクティブ式の曳航ソナーも出てきた。ロッキード・マーティン社製のAN/SQR-20 MFTA(Multi Function Towed Array)や、タレス社製のCAPTAS(Combined Active and Passive Towed Array Sonar)が該当する。

設置方法は、ソナーの種類によって使い分けがあるので、すべての順列組み合わせが埋まるわけではないが、これらの設置方法とアクティブ/パッシブの別の組み合わせにより、さまざまなソナーができることになる。

さらに、外洋での遠距離探知性能を重視すれば低周波ソナー、浅海面での近距離探知性能を重視すれば中周波ソナー、機雷探知用なら分解能が最優先なので高周波ソナー、といった周波数の使い分けも加わる。




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